|
【ドラマ・企業攻防】ノーリツ鋼機 創業家の逆襲 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
2008.6.29 11:35
このニュースのトピックス:企業吸収・合併・提携

“お家騒動”に揺れるノーリツ鋼機本社=和歌山市内“お家騒動”に揺れるノーリツ鋼機本社=和歌山市内
和歌山市内のホテルで27日に開かれた自動写真処理機器メーカー、ノーリツ鋼機の株主総会。会社側の社長人事案が否決される異例の展開となった。それは、業績不振と株価低迷にしびれを切らした創業家の逆襲だった。
◇
午前10時、約140人が出席した株主総会は淡々と始まった。営業成績の紹介の後、会社側は5つの提案議題の説明に入った。議案には佐谷勉社長の退任と喜田孝幸副社長の社長昇格を前提とする、5人の取締役選任案が含まれている。
議長が5人の経歴を読み上げたとき、創業家の代理人が発言した。
「取締役は会社側提案の5人ではなく、こちらが提案する3人にしたい」
突然の修正動議に場内がざわつき始めた。「何が起こったのかしら」。60歳代の女性株主は隣席の男性株主に確認したが、男性も首を振った。
年配の男性株主が立ち上がり、質問した。
「創業家は数の理論で会社側の役員人事を否定しようとしている。それはなぜか。ノーリツ鋼機はかつてのライバルであるセイコーエプソンや富士フイルムと提携したが、それが気に入らないのか」
会社側は説明した。
「今までの経営体制で実りもあった。ぜひこのままやらせてほしい」。
議長は修正動議の3人の取締役候補者の略歴を説明し、議案決議に入った。
「修正動議に賛成」
「賛成だー」
創業家はじめ、大株主から大声が上がる。
「修正動議に賛成の皆さんの挙手をお願いいたします」
議長の声に、十数人のグループが一斉に挙手し、拍手する。騒然としたムードの中、修正動議はなし崩し的に可決された。
開始から約1時間。質問時間もなく。株主総会は半強制的に終わった。一般株主を置き去りにした「数の論理」で経営陣は退陣を余儀なくされた。
「ごたごた言ったところで、どうせ創業家には勝てっこない。筋書き通りの展開なんだ」
「会社側に何が何でも自分たちの議案を通そうという意志を感じなかった。最初からあきらめていたのではないか」
株主総会が終わっても、会場に残った個人株主から不満の声が漏れた。
ノーリツ鋼機の株主は創業者、西本貫一氏の長女が社長を務める西本興産が42%、長女自身が5%を所有するなど創業家一族で48%超を占める。米証券大手、モルガンスタンレーなど外資系企業も名を連ね、こうした一部株主が創業家に追随したのは間違いない。
質問した年配の男性は、「創業家が提案した3人の取締役は何者か。経営が変なところにいかなきゃいいが」と嘆いた。
◇
西本貫一氏は昭和18年、和歌山市内に写真館を開業。水車の原理を応用した印画紙の自動水洗機開発を機に31年、前身であるノーリツ光機製作所を設立し、36年に現社名に変更した。
50年ごろ、カラー写真の現像からプリントまで45分で仕上げるミニラボを開発し、写真をプリントするDPE店の出店が加速した。ミニラボは世界中で大ヒットする。
西本氏は90歳で死去する平成17年まで、社長を続けた。デジタルカメラの登場で写真プリントが自宅で可能になり、DPE店の閉店が相次ぐ時期でもあった。経営を引き継いだ佐谷勉前社長は、西本路線の軌道修正を図る。従業員のリストラや富士フイルムやセイコーエプソンとの提携に踏み切った。
創業家と経営陣の亀裂はジワジワと深まり、株主総会での「実権奪還」として爆発した。
◇
茶山幸彦新社長は、写真プリントの分野は未経験。ノーリツ鋼機の本社のある和歌山県ともほとんど縁がない。セイコーインスツルメンツ(現セイコーインスツル)の経営を立て直した功績を評価され、社長に要請された。
ただ、一部株主には「株価を回復してくれればだれが社長でも構わない」と期待する声もある。
株価低迷による資産目減りに危機感を覚えた大株主の創業家と、利益を確保したい外資系企業の思惑が一致したことも“お家騒動”の背景の一つだ。
「創業者が後継をつくらずに亡くなったことがそもそもの原因なんだよ」
古くからノーリツ鋼機となじみのある男性はこうつぶやき、株主総会の会場を後にした。
|
最近のコメント